昭和初期の夕景といえばお豆腐のラッパに割烹着姿のお母さんが子供を呼ぶ声。
そして玄関先には、犬小屋と鎖に繋がれた犬。そんな、映画のワンシーンのような光景を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
この時代ドッグフードはまだ無く、犬のご飯といえば白ご飯やおかずの残りにおつゆをかけたものなど、夕飯の残り物を与える家庭が多く見られました。
しかし、近年ドッグフードの種類も数多あり、愛犬に夕飯の残り物を与えるという家庭はほとんど無いのではないでしょうか。
では、なぜ今まで残飯を与えていた犬に、専用のドッグフードを与えるようになったのでしょう?
ドッグフードが誕生した歴史は?
縄文時代には既に人間と一緒に生活していたとも言われる犬ですが、意外にも犬がドッグフードを食べ始めたのは、わずか150年ほど前のことです。
そしてドッグフードが普及する以前は世界的にも残飯が与えられていたようです。
出航の際には長期保存が可能なビスケットがたくさん詰め込まれましたが、長期の航海が終わり帰港をする頃には劣化し硬くなっており、それらは廃棄されるものでした。
その廃棄されたビスケットを貪る野良犬をたまたま見たアメリカ人が1860年に牛の血や野菜のなどを混ぜたビスケットを作り、販売したのが始まりと言われています。
ですが当時の人にはその「犬用のビスケット」というのが残飯よりもオシャレに映ったようで、イギリスからアメリカへ、都市部から地方へとどんどん広まっていきます。
1922年 缶詰タイプのドッグフードが登場
1922年には缶詰タイプのものが登場し人気を博します。
現在でもよく見られるキブルタイプ(カリカリ)ドッグフードが登場するのは1956年のことでした。
粒を製造できる押出成形技術が開発され現在のようなドッグフードが製造できるようになりました。
1960年 日本で初めてドッグフードが発売
日本で初めてドッグフードが発売されたのは 最初にイギリスで犬用のビスケットが作られてから100年後の1960年(昭和35年)のことです。
欧米とは少し異なり、ブリーダーが幼雛用の餌を使用していたことをきっかけに作られました。
そうしてできた日本初のドッグフードは粉末の袋入りで、水で溶いて与えるというものでした。
より手軽に与えられるようにと、翌年にはビスケットタイプのものが。また、
日本らしくご飯に混ぜて与えるペレットタイプのものなども販売されました。
ポイント
「愛犬の栄養食」というキャッチコピーと共に売り出された日本初のドッグフードは「犬には犬のための栄養」という新しい考え方を私たちに示してくれました。
そして、その頃の日本といえば高度成長期真っ只中。 生活に余裕が生まれると、愛犬の健康にまで気を配れる人も多くなりドッグフードは認知され浸透していたのです。
愛犬のごはんは残飯じゃだめなの
残飯とは食事として出されたものの食べられることなく残ってしまったもの。
つまり人の「食べ残し」ですよね。
食べ残しをわざわざ保管し、長時間放置してから与えるということはないと思いますので、衛生面には特に問題なさそうです。
食材は人が食べるため安全性に配慮された良いものが使用されているようにも思われます。
ですが、ここに一つ目の問題があります。
犬に危険な食べ物がある。
人間には何の問題もなく美味しく食べられるものでも、犬にとっては生死に関わるような危険な食べ物があるということです。
「玉ねぎ中毒」などが有名な例ですね。
特に玉ねぎやネギなどは意識せず薬味など、習慣的に使用することも多い食材です。もし、このような危険な食材が入ったものを与えてしまうと取り返しがつかなくなることもあります。
犬の塩分とりすぎは危険。
2つ目の問題は「味」です。
もちろん、美味しい不味いの話ではありません。
私達の食事には当然ながら味がついています。
人間でも腎臓病や糖尿病などの疾患を持っている場合は塩分が制限されますね。
同じように犬も疾患を持っている場合は塩分の摂取が命取りになることがあります。
また、塩分の適量は人の場合よく1日5g以下と言われますが、犬の場合はさらに少なくその半分程度です。
犬と人間は主食が違う。
そして3つ目の問題がドックフードが勧められる最大の理由「人と犬の主食とする食物の違い」です。
日本人の主食は「米」ですよね。もし、小麦が主食という方はいても、肉を主食にしているという方はあまりいらっしゃらないと思います。お肉は主菜になることが多いですよね。お肉が嫌いな方の食卓にはあまり上がらないかもしれません。
では、お肉が好きな方に質問です。
お肉が出てきた時にお肉を残されることはありますか?できるだけお肉を食べて、お米やお野菜などを残されてはいませんか?
犬の主食はもちろん肉です。そしてお米などから栄養を取るのは苦手です。ですが、こうして出来た残飯にお肉は入っていたのでしょうか。。。心配になりますよね。
まとめ
「犬は残飯で十分なのでは?」と思っていらっしゃった方も、考えが変わられたのではないでしょうか。
もちろん、残飯ではなく大切な家族にはみんなと同じものを。とお考えになる気持ちも分かりますが、ヒトと犬は異なる生き物です。
大切な家族だからこそ、「犬には犬のための」ごはんを用意してあげて下さいね。