「犬に葱を食べさせると腰を抜かす。」こんな言葉を、みなさんも一度は耳にしたことがありませんか?
犬を飼っている人にとって、ネギを犬に与えてはいけないというのは常識とも言えます。
でもなぜ、与えてはいけないのでしょうか。「猫にまたたび」のように実はネギが大好き過ぎるとか?
いいえ、全然違います。理由を知ると、「え!?腰を抜かしてるわんちゃん!?可愛いかも!見てみたい!」なんて恐ろしいこと絶対に言えなくなりますよ。
犬に葱を食べさるとなぜ腰を抜かすの?
犬に葱を食べさせると腰を抜かすといわれてます。
もちろん、びっくりして腰を抜かしているわけではありません。
腰がふらつき、歩行困難になっている姿が、「腰が抜けたように見える」ということなんです。
ではなぜ、ヒトは美味しく食べられるネギを食べて、犬は歩行困難になってしまうのでしょう。
これはネギ類(ネギ・玉ねぎ・ニラ・らっきょう・ニンニクなど)に含まれるアリルプロピルジスフィドや二硫化アリル(ジアリルジスルフィド)という成分が原因とされています。
ヒトと犬では血液中のヘモグロビンの分子構造が異なっていて、犬の場合ネギ類に含まれるアリルプロピルジスフィドや二硫化アリルが、血液中のヘモグロビンを酸化させ、赤血球中に酸化障害によるヘモグロビンの酸化変性物(Heinz小体)を形成。赤血球の弾力性が失われ溶血性貧血を発症してしまう。というのです。
犬にネギをあげてはいけない!
ネギ類特有の匂いや辛味のもとになっている物質が、鉄分の多い赤血球を錆びさせてしまい、錆びてもろくなった赤血球は簡単に壊れてしまいます。結果、
赤血球が不足してしまいきちんと体の組織に酸素を運ぶことができなくなり、息切れやふらつきなどの症状がでてしまうのです。
これが俗に「犬に葱を食べさせると腰を抜かす。」といわれる「タマネギ中毒」の正体です。
よく聞く「鉄欠乏性貧血」であれば、鉄分を補えばよいのでしょうが、この「溶血性貧血」はそもそもの鉄分を受け入れる器が無い状態。
一生懸命呼吸をして酸素をいくらとりこんでも、たとえ鉄分を補給したとしても、受け取って体中に運んでくれる赤血球はいないのです。
もちろん人間にはこんな作用は起きません。
そしてさきほど、特有の匂いや辛味といいましたが、生はもちろん炒めて辛味がなくなっても、煮込んだもののスープだけをすくってもダメなものはダメです。
そもそも、愛犬の命を脅かしてまでネギ類を食べさせるメリットなんて何もないですよね。
参考
ドッグフードの中には「ニンニク」が含まれているものも多くあります。
これは、「ニンニクは適量の摂取であれば中毒症状を起こすことはなく、寄生虫の駆除、消化の促進といった効能がある。」というAAFCO(アメリカ飼料検査官協会)の見解からきているものですが、明確な適量の基準はないようです。
犬がネギを食べたときの症状は?
ふらつく・元気が無い・食欲がない・呼吸が早い・下痢・嘔吐・震えている・可視粘膜蒼白(口の中が白い)・痙攣・黄疸・血尿・血便・吐血など
症状は様々です。
もちろん、黄疸や吐血などの場合は、すぐに病院に連れて行きましょう。
それほど重篤な症状が見られない場合も、もしこのような貧血と思われる症状が突然現れたときは、ネギ類の置き場所や、人間の食事などを食べていないか、一度確認してみたほうがいいかもしれません。
犬がネギを食べてしまったときはどうする?
食べさせるつもりはなくても、愛犬が近づくことができる場所にあれば誤食するということもあります。
もし、確実に食べてしまったとわかっている場合はすぐに動物病院に連絡してください。
何をどれくらいの量食べてしまったかというのも重要です。伝えて指示を受けてください。
当然ながら、口の中に食べかけのものが残っている場合は気をつけて取り出してください。
胃の内容物を吐き出させるというのは有効な手段ですが、素人が行うのは危険です。
「タマネギ中毒」は摂取量や、体質、犬種、大きさなどに左右されることもあり、犬によって症状の出方も、出るスピードも様々です。
夕食時に食べちゃったけど特になんともなさそう。大丈夫だと安心して寝ていたら、夜中になってから症状が現れ重症化。最悪死に至る…そんな悲しいことも十分ありえるのです。
「玉ねぎをキッチンに置いていたら、愛犬がボール代わりに遊んでいた。」「夕飯の玉ねぎ入りハンバーグをテーブルの上に置いていたら、愛犬が食べちゃった。」そんな不注意で愛犬を危険に晒すことがないようネギ類の保管場所には十分に気をつけてあげてくださいね。
まとめ
人間にとっては美味しい食べ物でも、愛犬にとっては猛毒になることもあります。
そして、ネギ類が入っているいないに関わらず、人間の食べ物を犬に食べさせるのは、塩分過多など他の面でも心配事がいっぱいです。
そもそも、人間と同じもので良ければドッグフードの必要性はないですよね。
必要があるから犬には「犬のためのごはん」がちゃんとあるんです。
欲しがるから。喜ぶから。と安易に与えるのではなく、少しでもながく元気な姿で一緒にいてもらえるように、きちんと「愛犬のからだのこと」考えてあげてくださいね。