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子どもの身長が伸びない理由は?病気の可能性はある?

お子さんの身長が低い、伸びがまわりと比べて遅いという場合、病気ではないことがほとんどだといわれています。

成長期の到来が早いか遅いかにはかなりの個人差があります。成長期が早い「早熟型」であるか、遅い「晩熟型」であるか、要因は様々ですがご両親の成長期がいつであったかということはひとつの参考になります。

成長期の到来が遅い「晩熟型」の子は、最終的な身長は平均を上回るというデータもあります。

しかし中には特定の原因によって起こる低身長もあります。そういった場合には早期発見がとても重要なポイントとなります。

  

子どもの身長が伸びない原因

単純に、遺伝から推測される最終身長については下のような関係式があります。

 

男子の予測身長=(父の身長+母の身長+13)÷2

女子の予測身長=(父の身長+母の身長-13)÷2

 

しかしもちろん、身長はすべてが両親の遺伝で決まるわけではありません。遺伝以外の体内の要素としては、ホルモンの働きが大きく関係しています。成長に関係するホルモンとは、具体的には「成長ホルモン」「甲状腺ホルモン」「性ホルモン」です。

 

  • 「成長ホルモン」…脳の下垂体から分泌されます。この作用によって肝臓で「ソマトメジン」という物質がつくられて骨の成長を促します。
  • 「甲状腺ホルモン」…喉にある甲状腺から出るホルモンで代謝全般をコントロールします。骨の成長にも大きく関係します。
  • 「性ホルモン」…思春期の急激な身長の伸びの際に骨の成長にスパートをかける役割を果たします。同時に骨を成熟させる働きを持つため、成熟=伸びの終了をもたらす作用も持っています

 

こうしたホルモンの分泌にとって大切なのは「睡眠」「栄養」「運動」です。

一度小児科等を受診して「病気ではない」と診断された場合には、これらのことに気を配り日々を過ごしていくことによって、早いか遅いかの差はあっても、たいていの場合は成長期が訪れ、身長の伸びがみられます。

低身長の場合の多くには栄養の問題点がみられるそうです。偏食や小食などによって成長に必要な栄養が充分に摂れていないというケースです。また、3歳までに充分なたんぱく質やカロリーが摂取できていない場合、その後食事量や食事内容が改善されても成長期に標準身長まで達しないことが多いといわれています。

睡眠の問題も非常に大切です。睡眠時間そのものももちろんですが、睡眠の質についても考えていく必要があるでしょう。ストレスなどの精神的な問題も無視できません。

 

ある決められた年度、男女別に多くのデータを集計し、年・月齢別に身長・体重の平均値を曲線で結んだものを「男女別標準成長曲線」といいます。

このグラフ内にお子さんの身長や体重を記入していくことで、標準と比較して現在お子さんがどのような状態にあるかを調べることができます。

成長曲線は母子手帳に記載されています。また、インターネット上でも簡単にダウンロードすることができます。学童期には毎年必ず身体測定が行われると思いますので、こういったデータを集計していくとよいでしょう。

 

平均値からのばらつきの大きさ(分布の幅)を、SD(標準偏差)という値で表します。

身長が同性同年齢の平均身長に比べて著しく低い場合、具体的にはSD値が-2以下の場合、医学的には「低身長」と定義されます。平均身長から-1SD~+1SDまでの間に全体の68%程度が含まれ、-2SD以下の身長の人は全体の2.3%程度といわれています。

 

-1SD~-2SDの間である場合や、-2SD以下でなくても身長のSDスコアが年とともにだんだんと低下しているような場合には、気がついた時点で小児科などを受診して定期的に経過を観察していくのは大変よいことでしょう。

病気ではない場合がほとんどといわれていますが、身長に関する治療は時期を逸すると効果が得られないことがあります。少しでも気になることがある時には早めに相談することは非常に大切です。

 

平均以下の身長であるが、男子で11歳以下、女子で10歳以下の時期に身長曲線が今までよりも上向きになっている場合(=より平均に近づいている場合)

これは思春期の成長がその年齢でスパートに入ってきた事を示しています。

このような場合は「思春期早発症」の可能性があります。一般的な時期よりも3年ほど早く成長期が訪れてしまう状態です。

「思春期早発症」は、そのままにしておくと身体的な成熟が早く進み早く終了するということになるため、最終的に低身長となってしまいます。

そういった場合には、ホルモンの分泌を抑制して成長期の進行を遅らせる等の治療が有効です。

「思春期早発症」は身長の伸びと同時に、男子では陰毛の発生や声変わり、女子では乳房の発達や初潮といったことがみられます。こうした時には早めに小児科を受診することをお勧めします。

身長が伸びない理由は病気の可能性も!?

-2SD以下は医学的に「低身長」と定義されるということですが、病的な低身長であるかどうかの判断は医師による検査や診察が必要です。

低身長・成長障害についての専門機関や専門医はインターネット等で調べることができます。かかりつけの小児科がある場合にはそこから紹介してもらうのもよいでしょう。

 

病院ではまず、生まれた時の状況や家族の身長、これまでの病歴、日頃の食生活や睡眠などについての問診を行います。成長曲線を作成する必要があるので母子手帳や今までの成長記録などを持参するとスムーズです。

身長・体重の測定、血液検査、尿検査といったひととおりの検査も行い、内臓疾患の有無を確認します。

また、レントゲン撮影によって骨の発育状態を調べます(通常は両手の撮影となります)。 ホルモン分泌状態の計測や第二次性徴の進行状態の確認を行う場合もあります。

こうした検査を経て、現在の成長段階や低身長が病的なものであるかどうかについての診断を行います。

 

低身長でも病気とは考えにくいものがあります。

ホルモン分泌や内臓などに特定の異常はみられず、遺伝や生活環境、ストレスなどが要因となっていると考えられるものです。

こうしたものは「突発性低身長」とよばれ、「家族性低身長」「体質性低身長(いわゆるオクテとよばれる思春期遅発症を含む)」「原発性低身長」といったものが含まれます。

 

こうした場合には特に緊急の治療を要しません。食事や睡眠といった生活習慣を見直していくことが大切でしょう。

 

とはいえ、おうちの方が「何らかの成長障害かもしれない」と感じたら早期に専門の医療機関を受診することはとても大切です。

低身長の中には「ホルモン療法」が有効な場合がありますが、思春期を経て骨の成長が止まってからではホルモンを投与しても効果が得られないためです。また、内臓疾患がある場合にはそれを早期発見する必要があることはいうまでもありません。

「何歳ごろに病院に行けばいいの?」ということに関して一概にはいえませんが、一般的に「平均身長との差があまり大きくならないうちに」ということはいえると思います。

成長曲線などを調べた上でおうちの方が「あれっ?」と思われた時には早めに受診した方がいいでしょう。

すぐに何らかの治療は開始されず「経過観察」という形になることも多いと思いますが、医療機関と連携していくことによっておうちの方の心配が軽減される面もあるでしょう。

 

ちなみに、特定の原因によって起こる成長障害としては以下のようなものがあります。

  • ホルモン分泌の異常(成長ホルモン分泌不全性低身長症、甲状腺機能低下症・性早熟症等)
  • 染色体の異常(ターナー症候群・プラダーウィリー症候群等)
  • 小さく生まれたことが関係しているもの(SGA性低身長症等)
  • 主要臓器の異常(心臓・腎臓・肝臓・腸の病気等)
  • 軟骨や骨の異常(軟骨無形成症・軟骨低形成症)
  • 心理的原因(愛情遮断症候群等)

 

上記の中で、成長ホルモンや甲状腺ホルモンの不足が原因で起こっているものについては「ホルモン療法」が有効です。また、軟骨無形性症などに対して行われる「脚延長術」という特殊な治療法もあります。いずれも早期発見・早期治療が大切です。

  

さいごに

子どもの成長には「ストレス」も大敵だということはいえるでしょう。

お子さんの低身長が心配なご家庭の場合、食が細い子に無理に食事をすすめたり、早く寝かせようとしたり、ついつい口うるさくなってしまいます。

日々の生活の中には心配なことがたくさんあります。おうちの方の心理としては当然ですが、そうしたことがお子さんのストレスになってしまっては本末転倒です。

 

ストレスを多く感じると成長ホルモンの分泌が減少してしまいます。

また食欲不振や睡眠不足につながります。そうなってしまうといくらおうちの方が気をつけていても身長の伸びは望めません。

身長ばかりでなく、太りやすくなる、体調不良になりやすくなる、性格的にイライラしやすくなる、無気力になるといったことにもつながります。

 

お子さんに過度のストレスを与えず、本当に心配な点については一人で悩まず速やかに医療機関の診察等を受けながら、お子さんの成長を見守っていく気持ちを大切にしたいものです。

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