お子さんの顔を見て「あれっ?ひげが生えてる?」と感じた瞬間のお母さんの心理はちょっと複雑ですね。
成長段階として嬉しく思う反面、これからどんどん濃くなっていったらどうすればいいのかな…と考えてしまいます。
実際の処理についてはお父さんにお任せというお母さんも多いと思いますが、生える時期やメカニズムについて知っておくことは大切なことでしょう。
男の子のひげのメカニズムとは?
ひげはだいたい小学校高学年から中学生にかけて生え始めます。
第二次性徴の時期に脳から指令が出され、男性にはテストステロンというホルモンを中心とした男性ホルモンが多く分泌されるようになります。
この男性ホルモンによって男性特有の身体的な変化が起こります。
骨格ががっちりしてくる、肩幅が広くなる、筋肉がつく、喉仏が出て声変わりをするといった変化です。
この頃に体毛が濃くなるという変化も起こります。
体毛が濃くなるのは、時期としては声変わりが起こる前後でしょう。胸や足、脇といった箇所の産毛が硬くて濃いものへと変化していきます。
体毛が濃くなるメカニズム
体毛が濃くなるメカニズムは、大まかにいうと以下の通りです。
まず男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼという還元酵素と結びつきます。
この5αリダクターゼは男性ホルモンをより強力な男性ホルモンに変換する酵素です。
変換されたより強力な男性ホルモンをDHT(ジヒドロテストステロン)といいます。これが毛乳頭付近にある受け皿のレセプターに引き寄せられ、IGF‐1(ソマトメジンC)という物質をつくります。これが毛母細胞に作用して体毛の成長を促進します。
体毛の一つとしてひげも、この一連の作用によってどんどん濃くなっていくと考えることができます。
ひげは上記のように男性ホルモンの働きによって濃くなっていくものですが、ひげの太さや量にはかなりの個人差があります。
人種によっても違いがあります。
またヒトの体内には、性別問わず男性ホルモンと女性ホルモンとが存在しています。
つまり男性の体内にも女性ホルモンはあり、女性の体内にも男性ホルモンがあります。
この体内バランスによって体毛が濃いか薄いかといった違いが出てきます。女性であっても男性ホルモンが多めの場合には、ひげのようなものが生えてくることがあります。
ひげの役割と生える理由
メカニズムとしては以上のようなことがわかっていますが、ひげの役割やひげが生える理由は一体何なのでしょうか。
- 皮膚を保護している
- 感覚器官として働いている
- セックスアピールとして機能している
といったことがいわれてはいますが、明確な理由はわかっていないそうです。
手入れの行き届いた大人の男性のひげは魅力的なものとなる場合がありますが、ひげの役割は正直言ってあまり大きくはないように思います。
特に生え始めの時期の男の子にとっては戸惑いの方が大きいでしょう。
産毛をそると早く濃くなる?いつから処理する?
ひげの太さや量にはかなりの個人差があります。
中学生くらいでうっすら目立ってくる子もいますし、成人になってもあまり気にならないという人もいます。
一般的には、高校生くらいから週に何回かひげを剃るということを考えていくようです。
生え始めの時期はまだほとんど産毛の状態です。
産毛が密集して生えていて、近くで見ると少し黒く感じるかな…といった程度です。
そのくらいならばまだ処理らしい処理は必要ないのですが、成長期に入ると急速に濃くなっていくことがあります。
この時期になかなか本人からおうちの方に対して「ひげを剃りたい」という言葉は聞かれないと思いますが、本人の中では意外と気になっている場合もあります。
あるいは逆に、本人は全く気にしていなかったのにある日人から言われてとてもショックを受けた…という例もあります。
隠れて剃刀などを勝手に使用するのは大変危ないですし肌にもよくありません。おうちの方が見て少し濃くなってきたかな…といったタイミングで声かけをしていくのはとてもよいことだと思います。
たとえば、小さなハサミを用いて切るという処理だけでも充分な場合があります。まだ産毛の段階で剃刀などを用いると肌への負担のほうが心配です。
お父さんの散髪に同行させて顔そりをしてもらうといったこともよいと思います。
いきなり男性用シェーバーを使う必要はないので、お母さんが使っている女性用の顔そり用品をお子さん用に購入してみるといったことでもよいでしょう。
その際、処理したあとの保湿についてきちんと教えてあげる必要があります。
刃物を肌に当てたあとそのままにしておくと赤くなったり乾燥してしまったりします。
肌の状態が悪くなるとにきびや肌荒れにつながってしまいますのでしっかりとケアすることを教えてあげましょう。おうちにある保湿クリームや化粧水などでよいのできちんとつけるようにしましょう。
生え始め当初は、ほとんど女性の産毛ケアと同様でよいのではないかと思います。保湿に関してはお父さんよりもお母さんのほうが詳しいと思いますので、ぜひ積極的に助言してあげてください。
男性用の用具を使用するようになったら、剃る前にひげを充分に濡らしてひげを柔らかくしておくといったこともとても大切です。
手順をしっかり教えてあげましょう。
剛毛ではない場合、電動シェーバーのほうが肌によいといった声もあります。
ニキビなどができている場合にはスティック型のシェーバーを用いるとよいでしょう。
スティック型は広範囲や濃いひげには向きませんが、中学生くらいのひげにはかえってピンポイントで用いることができて便利です。
女性が眉の手入れの際に用いるフェイスシェーバーでも充分に対応できるでしょう。
ひげは、一般的に朝の午前6時から10時ごろまでにいちばん伸びるといわれています。
ですから伸びが気になる場合にはそれを過ぎてから剃ったほうが効率的だともいわれています。けれどもその時間に剃ることは実際にはなかなか難しいでしょう。
朝起きてすぐの肌は、疲れが取れてハリが戻っているため剃刀負けなどを起こしにくく、剃るのに適した状態となっています。
ただし朝の登校前にあわてて処理をすると怪我などの恐れがあります。慣れないうちは夜ゆっくりお風呂につかりながら処理をしていってもいいでしょう。
剃刀などの刃物が肌に与える悪影響を考え、まだ産毛の段階の時期には口ひげ処理専用のローションや肌にやさしい除毛クリームを使用するということもあるようです。
女性のむだ毛処理用として販売されていることが多いですが、産毛の段階ならばこうしたものを使用していくのも一つの方法です。
ただし男の子のひげはそのうち量も増えて太くなっていくものですので、これだけではなかなか対応しづらいといえるでしょう。
「産毛を剃るとかえって濃くなる」ということは昔からよくいわれていますが、これは必ずしも真実ではないようです。
まず一つには、成長期のひげは日々成長していますから、処理したあとも次々と新しいものが生えてきます。
量も増えますし毛自体も太くなっていきます。成長の途中段階であるがゆえに「濃くなってきた」と感じるのはある意味当然という面があるでしょう。
また、毛は普通先端がとがっているものですが、剃ると断面が広くなってしまいます。円すい形のものが円柱形になってしまうと考えるとわかりやすいでしょう。
こうしたことから視覚的に「剃ったらかえって濃くなった」と感じてしまうようです。成長期に物理的にひげの量が増えているのは事実ですが、「剃るから濃くなる」ということではありませんので、きちんと処理をしていきましょう。
適切な処理をしていきましょう
生え始めの時期に適切な用具が手元になく、おうちの方に相談するのも恥ずかしくて抜いてしまうということもよくあると思います。
この「ひげを抜く」という処理はどうなのでしょうか。
毛を抜くと、抜かれた毛の根元の毛細血管が再生時に前よりも太くなるということが医学的にも証明されているそうです。
つまり毛は、刺激を受けると太くなってしまうということはいえるようです。また細菌に感染して炎症を起こしてしまうこともあります。ですから抜くのは避けるべきでしょう。
抜くのと同様に、「一日に何回も剃る」というのも刺激という点においてよくありません。肌の状態が崩れてニキビの原因にもなります。
男の子の場合、ひげの処理には一生付き合っていくことになるでしょう。
自己流の処理を勝手に始めてしまうよりも、おうちの方と適切な方法を一緒に考えていくことは非常に大切だといえます。お父さんにもしっかり協力してもらいながらお子さんの成長を見守っていきましょう。
とても気にしている場合、高校生になったら永久脱毛も検討をしてあげましょう。