フルーツと言うと健康的なイメージがありますよね。
食卓の上などに常備しているという方も多いのではないでしょうか。
そんなフルーツの中にも、犬にとっては危険だと言われているものがあります。
それは「ブドウ」です。
でも実は、なぜブドウが犬に良くないのかは分かっていません。
分かっていないのにダメだと言われるなんてどんな理由があるのでしょう。
なぜ犬にブドウはダメだと言われるの?
ブドウ中毒が注目され始めたのは割と最近のことです。
2001年にアメリカで10頭の犬がブドウやレーズンなどに食べた後に急性腎不全を起こした例が紹介され、注目されるようになりました。
その後、イギリスでも4頭の症例の報告があり、2005年にはアメリカの同グループにより1992年から2002年の間に発症が確認された43頭もの犬の症例をまとめたものが発表されました。
日本でも2010年の日本小動物獣医学会誌短報にて「ブドウ摂取後に急性腎不全を発症して死亡した犬の一例」が掲載されたこともあり、多くの人がブドウの危険性を認識するようになりました。
ただ、はじめにお伝えした通りブドウがなぜよくないのか、そのメカニズムは現在のところ解明されていません。
先ほどご紹介した日本で発表された症例はデラウェア70gを皮付きのまま食べたマルチーズ(オス3歳2.5kg)の死亡例ですが、この発症例を超えるブドウを食べても発症しない犬がいることも報告されており、反対にこの症例以下の摂取量で死亡した例も報告されています。
食べたブドウの品種も様々で、犬種もマルチーズやシーズー、ヨークシャテリアなどの小型犬だけでなく、ラブラドールレトリバーなどの大型犬の死亡例も報告されています。
犬がブドウを食べるとどうなるの?
2005年に報告された43頭の例を見てみましょう。
43頭の内訳は、ラブラドールレトリーバー13頭、ゴールデンレトリーバー4頭、雑種4頭とその他17犬種の22頭です。
年齢は7ヶ月~13歳。体重も2kg~48 kgとバラバラで、平均年齢は4歳。平均体重は25 kgでした。
食べたのも生の葡萄だったりレーズンだったりさまざまで、ブドウを食べたこと以外は、特に共通点も見つかりません。
でも食べてからの症状は共通していて、全ての犬に嘔吐の症状が見られたようです。
次いで77%の犬が無気力になり、72%の犬に拒食症症状が出ました。
また約半数である51%の犬が下痢を起こし、49%の犬には排尿量の減少が見られたそうです。
嘔吐は全ての犬に見られましたので全43頭中20頭は死亡してしまったということになります。かなり高い死亡率ですよね。
また、排尿量の減少まで見られた場合の生存率はさらに厳しく、全43頭中排尿量の減少が見られた21頭からはわずか5頭しか生き残ることができませんでした。
これらの症状は目に見えるものですが、当然体の中の異常によりこれらの症状が引き起こされているわけですよね。
検査結果では、90%以上の犬で尿素窒素や、クレアチニン、カルシウム、リンなどが高い異常値を示していました。
尿素窒素やクレアチニンは腎臓でろ過されて排出されるべきものですので、これらの値が高いということは、腎臓がきちんと機能しておらず排出できていないということになります。
また高リン血症や、高カルシウム血症も腎機能障害が原因とされています。
また、Ca×P(カルシウムリン積)の値が高いと、血管を構成する三つの膜(内膜・中膜・外膜)の内、「中膜」の石灰化を引き起こすとも言われています。
なぜこんな状態になってしまうのか理由は分かっていないものの、ブドウを食べた多くの犬が腎機能障害などを引き起こし死亡しているというのは確かなようです。
犬がぶどうを食べてしまった時はどうすればいいの?
もし食べてしまったことが分かった場合には、まずは食べた量を把握し、すぐに動物病院へ連絡して指示を仰ぎましょう。
当然、大量に食べたことが分かっている場合はすぐに動物病院へ連れて行かなければなりませんが、個体差もありどれぐらいの量で発症するのかといったことも分かっていませんので、大量かどうかの判断は難しいところです。
先ほどご紹介したマルチーズの場合は70gのデラウェアでしたが、もしこれが巨峰などの大粒のブドウの場合一粒20gほどありますので70gはたった3~4粒ということになります。
またこれよりも少ない体重1kgあたり20gで発症した例もあるようですので、食べたブドウの粒の数=体重(kg)くらいから大量と言って良いのかもしれません。
食べたものがレーズンだった場合は、より量の把握が難しいかもしれませんが、一応調べてみたところレーズンの20gは30~35粒ほどです。
ただ、レーズンと生ブドウを同じグラム数で考えて良いのかというのも分かっていませんので、あくまで量(g)の目安です。
もし、食べてしまった場合は催吐処置が推奨されてはいますが、素人が行うのは危険ですので必ず病院で処置を受けてくださいね。
ひどい場合は透析などの治療が必要となる場合もありますし、命を落とす可能性もあるのですから、なるべく早い段階での適切な処置が必要です。
食べてしまった事が分かったらすぐ獣医さんに相談です。
まとめ
犬は、私たち人間の食べているものが自分にとって危険なものかどうかなんて判断できません。
そして、大好きな飼い主さんが美味しそうに食べているものなら、自分も食べてみたいと思っても当然ですよね。
くれぐれも大切な愛犬の手の届くところには愛犬がうっかり食べてしまいそうな物は置いておかないでくださいね。