おせち料理は漢字では「御節料理」と書きます。
もともとは、元旦と一年に5回ある季節の節目の日(節日)を祝うために神様にお供えして食べたものを「御節供(おせちく)」と呼んでおり、おせち料理はお正月だけのものではありませんでした。
それが江戸時代になって庶民に広がると、お正月に出される料理が「おせち料理」となって世の中に定着していくことになったということです。
おせち料理の種類とそれぞれの意味とは?
まず、おせち料理のそれぞれの重には何を詰めるのが一般的なのでしょうか。
「五の重」の習わしについて見ていきましょう。
一の重
一の重には、お祝いにふさわしい「祝い肴」と「口取り」を詰めます。
「祝い肴」とは、祝いの席で出される酒の肴のことです。
おせちの祝い肴として関東では「黒豆・数の子・ごまめ」、関西では「黒豆かごまめ・数の子・たたきごぼう」の3種を用いることが多いといわれています。
「口取り」とは甘い料理を中心とした酒の肴になるものをいい、おせちでは「かまぼこ・きんとん・伊達巻・昆布巻・寄せ物」などを指すことが多いということです。
二の重
二の重には、海の幸を中心とした「焼き物」を中心に詰めるといわれています。
三の重
三の重には、山の幸を中心とした「煮しめ」を入れることが一般的とされています。
「煮しめ」は「家族が仲良くぎゅっと煮詰まるように結ばれる」ことを祈って作られます。
与の重
忌み数字である「四」は使わず、「与」と表します。
日持ちのする「酢の物」を中心に詰めるといわれています。
五の重
五の重は、歳神様から授かった福を詰める場所として空にしておく風習があったそうです。
大家族の場合には家族の好物や予備の料理を詰めていました。
現在では五の重まで用いるご家庭は少ないと思います。三の重まで用いる場合には、一の重に「祝い肴・口取り」、二の重に「酢の物・焼き物」、三の重に「煮しめ」を詰めるのが一般的だといわれています。なお、詰め方については地域によっての違いがあります。
では次に、それぞれの食材についてのいわれを見ていきましょう。
祝い肴・口取り
数の子 | ニシンの腹子である数の子は、卵の数が多いことから「子孫繁栄」を願っています。 |
ごまめ(田作り) | ごまめが「まめ」に通ずることから「無病息災」を願うものとされています。
また、かつて片口イワシを農作物の肥料として使っていたことから「田んぼを作る」という漢字が使われています。 「五穀豊穣」「食べることに困らないように」という意味が込められています。 |
黒豆 | 黒く日焼けするほどまめに働けるようにとの願いが込められています。
黒は道教で邪気払いの意味があり、「無病息災」の祈りも込められています。 |
たたきごぼう | 深く根を張るごぼうは、「家内安全」や家庭が土地にしっかり根付くことを願っています。
たたくことから「開きごぼう」ともいわれ、「運がひらく」に通ずるとされています。 |
紅白かまぼこ | 赤は魔よけ、白は清浄の意味があります。 |
昆布巻き | こぶが「よろこぶ」に通ずるといわれる縁起物です。
形が巻物に似ていることから「学業成就」の願いも込められています。 |
栗きんとん | 黄金色に輝く財宝にたとえて金運の象徴とされ、豊かさと勝負運を祈っています。 |
錦玉子 | 黄身と白身の2色は金と銀をたとえています。 |
伊達巻 | 巻いた形が巻物に似ていることから、学問や習い事の成就を願っています。 |
酢の物・焼き物
紅白なます | 水引をかたどっています。平安・平和を祈ります |
ちょろぎ | 「長老喜」「千世呂木」と書いて、長寿を願っています。 |
酢蓮 | れんこんは仏教では極楽の池にあるといわれ、けがれのない植物といわれています。
煮物にも使いますが、穴があいていて見通しがよいことから縁起物とされます。 |
菊花かぶ | 旬のかぶをおめでたい菊の花の形に飾り切りして酢の物にしたものです。
かぶは武家社会では「かしら」に通じると考えられ、「かしらを目指すように」との意味が込められています。 |
ぶり | 成長とともに名前が変わる出世魚の代表格です。
「立身出世」を願います。 |
鯛 | 「おめでたい」と「たい」との語呂合わせです。
七福神の恵比寿様が持っている魚としてもなじみ深いもので、お正月に限らずおめでたい日に登場する魚です。 |
海老 | 長いひげをはやし腰の曲がった海老は、長生きの象徴とされています。 |
煮しめ
里芋 | 子芋がたくさんついていることから「子孫繁栄」を願っています。 |
八つ頭 | 「頭」となって出世するように、また里芋と同様に子芋がつくことから「子孫繁栄」を願います。 |
くわい | 大きな芽が出ることから、「めでたい」といわれています。 |
椎茸 | 椎茸は陣笠に見立てられ、神様へのお供えとして珍重されてきました。
元気、壮健であることへの願いが込められています。 |
手綱こんにゃく | こんにゃくを手綱のような形に締めて煮たものです。
「手綱を引き締め、己を厳しくいさめて戦いに備える」という武家社会の名残です。 |
たけのこ | 成長が早いことから、子どもがすくすく育つことを願っています。
空に向かって真っすぐに伸びることから「立身出世」や家の繁栄という祈りも込められています。 |
おせち料理にはそのほかにも色々な食材が用いられます。
地域性もありここですべては紹介できませんが、おうちに代々伝わる料理のいわれを調べてみることも楽しいのではないかと思います。
子どもにわかりやすい意味の伝え方は?
上記のようにおせち料理の食材にはそれぞれしっかりとしたいわれがあります。
しかし元々がお正月の宴に合わせた、いわゆる「お酒のおとも」といった色合いが濃いため、あまりお子さん向きではないともいえるでしょう。
「子どもはおせち料理をあまり食べない」というご家庭も多いのではないかと思います。
実際、自分自身が小さい頃におせち料理を食べる目的で楽しみにしていたかといわれたら、ちょっと疑問が残ります。
ただ一年に一度、重箱が登場して母親があれこれ詰めていくのを見るのは好きでした。普段の食卓とはまた違う、日本的な食材の数々を目にするのはお子さんにとっても大切なことなのではないかという気がします。
「無病息災」「家内安全」「五穀豊穣」「立身出世」などの言葉も、日々の生活の中ではほとんど使わなくなりました。
しかし知識としてそういった言葉を知っていることも大切です。どこかで文字だけを見てもなかなかピンとこないものです。
おうちの方が意味を噛み砕きながら説明してあげると、お子さんの中に強く定着していくでしょう。
お正月の料理は「~なれますように」という願いが込められているものがほとんどです。
噛み砕いて説明する際には、おうちの方がお子さんや他のご家族に対して具体的にどんなことを願っているよ…といった身近な視点を持って話をしてあげると、お子さんにとってはよりわかりやすいのではないかと思います。
一緒におせち料理の準備をしよう
まずは、お子さんと一緒に重箱に詰める作業をしてみることをおすすめします。
ある程度の年齢のお子さんならば調理に参加してもらってもよいでしょう。
普段の食事やお弁当づくりなどでもそうですが、子どもは自分が参加して作ることが大好きです。
既に詰められたものを出されて説明されるよりも、詰めていく時にさまざまないわれを説明していくほうが断然興味が湧くのではないかと思います。
もちろん重箱にはお子さんの好きなものも一緒に詰めていきながら、昔ながらの食材とともにきれいに並べてみましょう。
年末の買い出しなどに同行させて一緒に食材を見るのもおすすめです。
年末にはさまざまなお正月の食材がお店に並びます。実際には購入しなくても「見るだけでも楽しい」という気持ちは大人にもありますから、ぜひお子さんと一緒にでかけてみてください。
新しい年の始まりを祝うお正月。古くから日本の人々が願ってきた思いが現代のお子さんに受け継がれていくことは、とても素敵なことなのではないでしょうか。