「頼んだ荷物がいまだに届かない」ときなどに使う「いまだに」。
「いまだに」が、「未だに」「今だに」のどちらなのか迷う方も多いのではないでしょうか。
「いまだに」は正式な文章でも使われることが多く、正しい意味や使い方を知っておきたい言葉です。
今回は、「未だに」と「今だに」の違いについてお伝えします。
「いまだに」とは
「いまだに」は、副詞です。副詞とは動詞や形容詞を修飾するもので、対象となるものの意味を強めたり詳しく意味を添える効果があります。
「いまだに」の意味には、
- 「今になってもまだ」
- 「今もなお」
- 「依然として」
などがあります。
「いまだに」は、漢字では「未だに」と一般的には表記されますが、「今だに」と書かれているものもあります。
「いまだに」の意味を踏まえた上で、「未だに」「今だに」のどちらを使うのが正しいのかを考えていきましょう。
「未だに」
「未だに」は、「いまだに」の正しい漢字表記です。
漢字「未」は、「木がまだ伸びきっていない部分」を表し、「まだそのようになっていない」「まだ~していない」という意味があります。
漢字「未」の熟語には、
- 未使用
- 未解決
- 未成年
- 未納
などがあり、「未」は下につく語を「まだ~ない」と打ち消します。
「未だに」の意味
「未だに」は、「時間が経過しているにもかかわらず、状態が続いていること」という意味です。「未だに」は、肯定的な場面、否定的な場面どちらでも使うことができます。
「母校には、未だに女の子の銅像が残っている」
「母が作ってくれた人形を、未だに大事にしている」
「優しかった祖父のことを、未だに覚えている」
否定的な場面で「未だに」を使う場合は、「未だに~ない」となり、下の部分につく動作などは打ち消されます。
「未だに犯人の証拠がつかめない」
「入学して一か月がたつが、未だに親しい友達ができない」
「未だに雨がやまないので、明日の運動会は延期になるに違いない」
否定的な場面で「未だに~ない」と表現する場合は、本人が対象となるものや状態について、「好ましくない感情」を抱いています。
「今だに」
現在、一般的に「いまだに」を「今だに」と書くことは誤りとされています。「いまだに」に似ているものとして、「今に(いまに)」という語があります。
「今に」は、「いまだに」と同じく副詞で、後の語を打ち消し
- 今でもなお
- いまだに
- そのうちに
などの意味をもちます。
「今に」は、「いまにその恩は忘れ侍らねど」『源氏物語』とあり、平安時代ではすでに使われていました。
現在でも、「今に至るも何の音沙汰もない」といったように用います。
このように「今だに」は、副詞「今に」が誤用されたものとも考えられます。
また、現在では「未だに」の「未」は打ち消しのイメージが強いため、「いまだに」を肯定的な文章で表したい場合、あえて
「私は、今だに楽しかった子ども時代を覚えている」のように使う場面もあるようです。
「未だに」と「今だに」の違い
「未だに」と「今だに」の違いをまとめると、
「未だに」
- 「いまだに」の正しい漢字表記
- 「未だに」は、「時間が経過しているにもかかわらず、状態が続いていること」という意味
- 「未だに」は、肯定的な場面、否定的な場面どちらでも使うことができる
- 否定的な場面で「未だに」を使う場合は、「未だに~ない」となり、下の部分につく動作などを打ち消す効果がある
- 否定的な場面で「未だに~ない」と表現する場合は、本人が対象となるものや状態について、「好ましくない感情」をもっている
「今だに」
現在、一般的に「いまだに」を「今だに」と書くことは誤り
- 「今だに」に似たものとして、「今に」という副詞があり、「いまだに」と同じく後の語を打ち消し、「今でもなお」という意味をもつ。そのため、「今に」が誤用されて「今だに」と表記されることがあったとも考えられる。
- 現在では「未だに」の「未」は打ち消しのイメージが強いため、「いまだに」を肯定的な文章で表したい場合、あえて「今だに」と使う場面もある
「未だに」と「今だに」の違いまとめ
「未だに」と「今だに」の違いをお伝えしました。現在では、「いまだに」と書く場合「未だに」が正しいとされています。
公的な場面や、試験などでは「未だに」と書くようにしましょう。
「未だに」は打ち消しのイメージが強いため、肯定的な場面で「いまだに」を使う場合、「今だに」と表現することもあるようです。
ニュースや新聞などでは、誤解を招かないように、あえて平仮名で「いまだに」とすることもあります。
日本語は時代とともに変化する言葉であり、「今だに」が完全に間違いであるとはいえません。私的な文などで「未だに」「今だに」を使い分けて表現するのも楽しいでしょう。
公的な場面では「未だに」を使うことを覚えておきましょう。