キ学童期にサッカー、野球、バスケットボールやバレーボールなどを頑張っているお子さんが膝の痛みに悩まされることがあります。
原因としては様々なことが考えられますが、医療機関で「オスグッド」と診断されることも多いのではないかと思います。
「オスグッド」とは一体どういうものなのでしょうか。
オスグッド病とは何? 成長痛との違い
「オスグッド」は正式な名称を「オスグッド・シュラッター病」といいます。
「オスグッド・シュラッター症候群」と呼ばれることもあります。「オスグッド」「シュラッター」は、症例を確認・発表した医師の名前です。
ジャンプや屈伸の動きを頻繁に行うことによって膝周辺が大きな衝撃を受け、脛骨粗面付近に炎症が生じることによって起こります。
10歳~15歳程度の活発なお子さんに多いとされ、運動時に強く症状が現れます。
多くの場合、膝の脛骨(膝から足首の間を構成する長骨の一つ)付近や膝の裏に痛みを感じます。
膝のお皿の下付近の骨が徐々に目に見えるような形で出っ張ってきてしまい、時には赤く腫れたり熱を持ったりします。
出っ張った部分の骨を押すと痛みを感じますが、最初は我慢できないほどの痛みではないためそのまま運動を続けてしまうことも多いといわれています。
オスグッドはしばしば「成長痛」と同様に扱われることや「成長期だから仕方がない」といった見方をされることがあります。
しかし「成長期だからオスグッドになる」のならば、多くのお子さんがオスグッドになってしまうことになります。
実際には、部活動などで激しい運動をしている子がなってしまう場合が多く、さらに同じ運動をしていてもなってしまう子とならない子とがいます。
オスグッドと成長痛の違い
まず「オスグッド」と「成長痛」との違いは何でしょうか。
成長痛もオスグッドも、成長期のお子さんに見られる症状といえますが、以下のような違いがあります。
「成長痛」とは、膝に限らず成長期に全身に出る痛みの総称です。
小児期(2歳~10歳程度)で出現し、思春期のころまで続くこともあります。
脚などの急激な成長の過程でみられますが、はっきりした原因はよく分かっていないということです。
成長痛の場合には日中にはあまり痛みはなく、夕方から夜間、明け方頃に痛むことが多いといわれています。
日によって痛む部位が変わるのも特徴の一つです。そして成長期が過ぎたら収まるのが一般的です。
これに対して「オスグッド」は主にスポーツをしている学童に多く、痛みの部位が膝や膝裏といった箇所に限定されます。
スポーツをしている時に痛みを感じることが一般的ですが、正座をした時や自転車をこいでいる時などにも痛むことがあります。
膝のお皿の下の出っ張ってきた骨の部分を押すと痛みを感じます。
また骨の出っ張りがなくてもオスグッドと診断されることがあります。
痛み自体は成人を過ぎる辺りで引いていくといわれていますが、成人後も「膝を床につくと痛みを感じる」といったことが残ることもあります。骨が出っ張ってしまった部分はそのままの形となってしまうことが多いということです。
オスグッドになるメカニズム
オスグッドになってしまうメカニズムを見てみましょう。
オスグッドは多くの場合、「大腿四頭筋の緊張によるもの」といわれています。
大腿四頭筋とは、ももの前の部分の4つの筋肉(大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋)を指します。
この筋肉はジャンプ、蹴る、しゃがむ、踏ん張るといった動作の際に使われます。
「筋肉を使う」ということは「筋肉が縮む=緊張状態にある」ということですので、使っている間は縮んで硬くなった緊張状態となります。
膝に負担のある動きの繰り返しやストレッチ不足などによって疲労物質が蓄積し、筋肉は硬くなったままの状態となります。
それによって、筋肉がついている箇所が常に引っ張られてしまいます。
大腿四頭筋が縮んで硬くなると付着箇所にある脛骨粗面という部分を常に引っ張り続けることとなります。
一方、骨は常に代謝しています。脛骨も毎日内部の成分が壊れたり新しいものを作ったりすることを繰り返しており、まだ10代では完全な骨ではなく軟骨の状態です。
大腿四頭筋によって常に引っ張られた状態のままだと、だんだんと剥離して骨の変形を起こすことになります。
こういった一連の流れによって、目に見えるほど膝の骨がボコッと出てしまうような状態へと進行していきます。
オスグッドの予防方法と治療方法はある?
オスグッドの原因は「大腿四頭筋の緊張」ということです。予防するためには大腿四頭筋の緊張を緩めていくことを考えていく必要があります。
オスグッドの予防方法について見ていきましょう。
ウォーミングアップとクールダウン
運動前のウォーミングアップと運動後のクールダウンは疲労物質を身体の各部に残さないために非常に重要です。
オスグッドに限らず、スポーツをする際にはさまざまなスポーツ障害を予防するために必ず行う必要があります。
最近ではこの点について指導者の認識は高まりましたが、小・中学生の場合にはお子さん自身にしっかりとした問題意識がないためにあまり真剣に取り組まないなど、実は徹底されていない面もあるのではないかと思います。
毎日の入浴
筋肉や神経の疲労回復に対して入浴は大変有効です。
しっかり湯船につかることによって血行が促進され、体内の老廃物や疲労物質除去につながります。
水圧によって足にたまった血液が心臓に押し戻される効果や、浮力によって体を支える筋肉の緊張を緩めるといった効果もあります。
ストレッチ
オスグッドは太ももの前側の筋肉が硬くなっていることによって起こります。
大腿四頭筋のストレッチは、痛みが出てからは過度に行わないほうがよいのですが予防としては効果が高いといわれています。
大腿四頭筋のストレッチ方法などを動画で検索してみましょう。運動前、運動後、お風呂上がりなどに行うとよいということです。
また足底筋(足の裏の筋肉)の強化も大切だそうです。足元のバランスを考えた時に足底筋はとても重要です。
足の指でゆっくりグーッと握って、ゆっくり開く動きを10回1セット、1日3セットほどやるとよいといわれています。
食事
3食をしっかり摂ることは基本ですが、栄養のバランスにも充分注意しましょう。
特にミネラルの一種である「マグネシウム」には筋肉を柔らかくする効果が期待できるといわれています。
マグネシウムは激しい運動を行うと汗とともに流れ出てしまいます。またストレスや疲労を回復するためにも消費されるといわれていますので、食事からしっかり摂取できるようにしましょう。
マグネシウムが多く含まれている食品としては、あおさ、わかめ、ひじき、ナッツ類、豆類などが挙げられます。
自分に合ったシューズ・インソールの使用
足の機能が低下すると全身の骨格バランスが崩れ、各部位にかかる負担が大きくなります。
自分に合ったシューズを選び、スポーツ時に膝や腰にかかる衝撃を軽減してくれるインソールを正しく使用することも大切です。
上記のようなことに気をつけていてもオスグッドになってしまった時にはどうしたらよいのでしょうか。
運動を控える
これは医療機関などで必ず言われることだと思います。
まずはスポーツを控えることが必要となります。同じことをしていても、元々筋肉量が少ない子の場合などにはその運動強度に耐えられないということもあります。しばらく運動を控えて炎症の状態を治していく必要があります。
部活動などではお子さん自身がなかなか休むことに納得しない場合があります。
「少し痛みが引いたので再開した」ということもよく聞きますが、それはやめたほうがよいでしょう。医療機関などでしっかり確認してから再開するようにしましょう。
オスグッドやその他のスポーツ障害をよく診察している専門機関を探す
一般的な整形外科の場合には、レントゲンを撮り、痛み止めや湿布をするといった痛みや炎症に対する対症療法が行われます。
もちろんそういった処置は必要です。
しかし「なぜ自分はオスグッドになったのか」という理由をよく知ることもまた大切です。理由をよく知らないまま痛みが引いて運動を再開すると、同じことが起こってしまう可能性もあります。
オスグッドは大腿四頭筋の緊張から起こると書きましたが、ではなぜ大腿四頭筋の緊張が起こるのかという点については、疲労などのほかにも個人差があります。
具体的には、身体の使い方や全身のバランスといったことです。
こうした点については運動時に限らず、日々の生活の中でも注意すべき点があるかもしれません。
オスグッドと姿勢の悪さや柔軟性との関連についての報告もあるということです。
同じ運動をしていても身体の使い方の上手な人は怪我や故障が少ないといわれています。スポーツ障害を扱うことが多い専門機関で、姿勢や身体の動かし方などについて考えていくことも大切なことといえるでしょう。
アイシング・テーピング・オスグッドサポーター
運動を控えることが大前提となりますが、運動時に痛みが出た場合や痛みが引かない場合には正しいアイシングやテーピングを行いましょう。
特にテーピングは正しく巻かないと意味がないばかりでなく他の箇所に負荷をかけてしまったりすることもありますので、いざという時のために正しい巻き方を知っておくことは大切です。オスグッドサポーターなども販売されています。
しかし、こうしたものは痛みを一時的に軽減することはできますが、基本的に治療をするためのものではありません。
オスグッドは症状が軽いうちに適切な治療を受ければ早期に回復するといわれています。違和感がある場合には無理をせずに治療に専念しましょう。
オスグッドは予防していくことが大切です
部活動などに入っているお子さんの場合、「少し痛くても周りに言わず我慢して続けてしまう」、「一度診察を受けたあと、勝手に活動を再開してしまう」といったことでオスグッドを悪化させてしまうことがあるそうです。
お子さんに特定のスポーツをさせる場合には、日々の様子から身体に痛みがないか、疲労がたまっていないかといった点についてよく観察していきましょう。
オスグッドについての正しい知識を持っておくことはとても大切です。
どうしてオスグッドが起こってしまうのかを知ることは正しい予防につながります。毎日のストレッチや運動前後の身体管理の重要性などについてお子さんと予防知識を共有していきましょう。
なってしまった時には、本人の焦る気持ちを充分汲み取りつつも養生を優先していくことが必要となってくるでしょう。
お子さんに対して休養の重要性や身体の動かし方とオスグッドとの関係、完治までの道筋などをしっかり説明してくれるような専門機関を探していくことも、お子さんにとっては支えの一つとなるかもしれません。