何かが壊れてしまったときなどに、何気なく口にする「なおす」。
もし、その「なおす」という言葉が意図通りに伝わらないとしたら、みなさんはどうしますか?
しかし、「その椅子、なおしておいて」、「どこに?」という一見あべこべに見えるやり取りも、実は正しく成立している場合もあるのです。
この場合、「なおす」を「片づける」という意味で捉えると、違和感はなくなるはずです。今回は、「なおす」と「片づける」のちがいについてご紹介したいと思います。
「なおす」とは
「なおす」とは、「物を正しい状態に戻す」「物を元の状態に戻す」「修理する」という意味の言葉です。
しかし、辞書を引くと「(近畿や九州の方言で)物を片づける、しまう」とも書かれています。
「片づける」とは
「片づける」とは、「物をしまう」「収納する」「散らばっているものを整える」などを表す言葉です。
「なおす」と「片づける」のちがい
先の説明からもおわかりいただけるように、「なおす」とは、近畿・九州地方での方言で、「物をしまう」「収納する」という意味で使われている言葉となります。
「なおす」にはもともと、「物を正しい状態に戻す」という意味がありますので、その点から考えると、「正しい状態に戻す→物をあるべきところ・場所に戻す→物をあるべき場所にしまう・片づける」という意味の派生があったのではないか、と推測できます(ただし、この理由は明らかになっていません)。
使われ方を見てみましょう。「なおす」は、「修理する」以外では、「病気を治す(なおす)」「服装の乱れを直す(なおす)」などの使い方があり、いずれも「物を正しい状態に戻す」「物を元の状態に戻す」意味を根底に置いた使われ方をします。
「片づける」は、ときに「仕事を片づける」「揉め事を片づける」などの言い回しで、「終わらせる、解決する、処理する」という使わ+れ方をすることもあり、ちがいが見て取れます。
「なおす」と「片づける」のちがい まとめ
「なおす」は、漢字や言い回しを変えて、「物を正しい状態に戻す」「物を元の状態に戻す」を根底において使われています。
一方、「片づける」は、「正しい状態に戻す→物をあるべきところ・場所に戻す→物をあるべき場所にしまう・片づける」という近畿・九州の方言以外では、全国的には「物事を終わらせる、解決する、処理する」という使い方があります。
「なおす」という言葉は、関東と近畿・九州では意味にちがいがある、ということを理解したうえで、しまうときや収納するときは、意識的に「しまう」を用いることが、誤解や混乱を回避することに繋がりそうですね。